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癒しのエルフ  作者: 南蛇井


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シーン2:空転する言葉 ― 意味の裏付けが消えた世界

ラグナは、同じ調子で語り続けた。


「災厄は、続いている」


誰かが顔を上げる。

だが、ざわめきは起きない。


「終わったとは言えない。

だが、今すぐ終わるとも限らない」


言葉は慎重で、否定も肯定もしない。

具体的な日付も、場所も、名前も出てこない。


「選択の時が来るだろう」


それだけだ。


群衆は理解しようとしない。

同時に、拒もうともしない。


誰かが頷き、

誰かが腕を組み、

誰かが、ただ立ったまま聞いている。


納得はしていない。

だが、不満も口にしない。


なぜなら、この言葉が「間違っている」と言い切れる要素も、

「正しい」と断言できる根拠も、どこにもないからだ。


かつては違った。


精霊が応答すれば、

言葉は即座に意味を獲得した。


癒しが起きれば、それは正しかった。

起きなければ、修正が必要だった。


今は、そのどちらもない。


言葉は宙に浮き、

宙に浮いたまま、落ちてこない。


それでも、人々は去らない。


誰かが囁く。


「……聞いていれば、何か分かる気がする」


だが、何が分かるのかは誰にも言えない。


預言は、方向を示さない。

行動を命じない。

終点を提示しない。


それでも、語られ続ける限り、

この場は「続いている」。


ラグナの声が止まれば、

この空白を、誰が埋めるのか分からない。


だから、群衆は耳を傾ける。


意味のためではない。

安心のためでもない。


ただ――

この場が、崩れないように。


言葉は、真偽を失った。

代わりに、持続する役割を得ていた。


語られ続けること自体が、

唯一の機能になっていた。

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