表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
癒しのエルフ  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/127

第16章:声がなくても、語る者 シーン1:精霊なき預言台 ― 語りは続いている

預言台は、まだそこにあった。


石段も、円形の壇も、語る者が立つための高さも、何ひとつ欠けていない。

かつて精霊が降り立った痕跡――刻印の焦げ、摩耗した祈祷陣――すら、保存されたままだ。


ラグナは、その中央に立った。


以前なら、最初の一語を発した瞬間、空気が変わった。

微細な振動が走り、精霊反応が連鎖し、言葉は「確認」された。

預言は語られると同時に、世界に受理された。


今は違う。


声は響く。

反響はある。

だが、それだけだった。


精霊の気配はない。

肯定も、拒否も、遅延もない。

言葉は、ただ空間に放たれ、戻ってくるだけだ。


ラグナは一瞬、間を置いた。


止める理由は、なかった。

続ける理由も、なかった。


それでも、彼は語った。


「――災厄は、終わっていない」


声は平坦で、抑揚も少ない。

かつて精霊に届くことを前提としていた言葉は、宛先を失ったまま形を保っている。


誰かが息を呑む。

誰かが耳を傾ける。

誰かが、わずかに安堵する。


だが、何も起きない。


癒えもしない。

悪化もしない。

世界は、反応しない。


ラグナは知っていた。

この預言が、成功でも失敗でもないことを。


確かめようがない。

終わらせようもない。


それでも、彼は最後まで語り切った。


沈黙が訪れる。

だが、それは完了の沈黙ではない。

次の言葉を待つ、未確定の空白だった。


預言は、もはや結果を生まない。

評価も、裁定も、伴わない。


ただ――

終わらない。


形式だけが、ここに残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ