表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
癒しのエルフ  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/127

シーン6:エルネの言葉 ― 回復の別定義

朝。

灰の原に、薄い光が差す。


夜の冷えがまだ残っているが、空気は昨日より柔らかい。

集落はいつも通り静かで、何かが回復したことを告げる兆しはない。


エルネは、外に出ていた。


昨日より、動きがいい。

関節のぎこちなさは残っているが、立ち上がるまでに時間はかからない。

歩幅も、ほんの少しだけ広い。


ティエナは、それを見て気づく。

癒しを使えば、もっと早く、もっと確実に楽になったはずだ。

だが今、目の前にあるのは「改善」ではなく、「継続」だった。


エルネは薪を抱え直し、短く息を整える。


「……昨日より、今日は動ける」


それだけを事実として口にする。

誇りも、安堵も、評価も含まれない声。


少し間を置いて、彼は続けた。


「それで十分だ」


ティエナは言葉を返せない。

否定も、肯定も、必要ないと分かってしまったからだ。


完治ではない。

元に戻ったわけでもない。


それでも、今日を始められる。

昨日の延長線上に、無理なく立てる。


エルネは、それ以上を求めていなかった。


「生きられる」という基準。

倒れないことでも、痛みが消えることでもない。


続けられること。

明日へ、途切れずに渡っていけること。


ティエナは、ようやく理解する。


癒しが与えるのは、結果だ。

だが、回復とは――


結果ではなく、時間だった。


彼女は何も言わず、エルネの隣に立つ。

その距離に、精霊はいない。


それでも、生活は進む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ