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6 名前ですら呼ばれてなかった
「くん付けなんて瑞穂にしては珍しいじゃん」
俺は瑞穂の隣に座った。
「男の子なので」
「俺も男だけど?」
「三井さんは…」
ちらりと俺を見た。
「そういえば、俺って名前で呼ばれてすらないんだった」
俺は足を抱えた。
「住菱さんって呼ばれたいのですか?」
「俺はうさぎ以下かー。結婚相手のはずなんだけどなー」
わざとらしく言ったら瑞穂は唇を噛み締めた。
「住菱くん…!これでいいですか…?」
「かわいいな」
俺は頭に手を伸ばした。
「っ!うさぎがいるから撫でない!」
慌てて手を引っ込めた。
「っ…」
瑞穂が頭を俺の頭に擦り付けた。
「そんなことするならうさぎを外に出してよ」
「もう、どうしてそんなに嫌がるのですか」
瑞穂は頬を膨らませた。
「苦手なのですか?」
「瑞穂の部屋に俺以外の男がいるのが嫌だ」
「それもそうですね」
瑞穂は立ち上がった。
「外に置いていきます。少し待っててください」
そのまま瑞穂は部屋を出て行ってしまった。
(…また一人か)
俺は俯いた。これでは自分の部屋にいるときと変わらない。
ため息をついて顔を上げた。
(?)
真っ白な部屋にそぐわない、漫画の表紙が見えた。
(瑞穂って漫画とか読むんだな)
近づいて表紙を見た。
「これって…!」
驚きで声が出てしまった。




