7 チョロすぎる
(俺ってやっぱ笑顔に弱過ぎだろ!!)
安田と別れてからの帰りの電車で思い返した。
(でも、やっぱ可愛かったな…)
好きなキャラと同じ髪型の超絶美少女の笑顔に惚れない訳がない。
(でも、安田が俺を好きになる要素なんかあったのか…?)
やっぱり顔だったのかもしれない。
(俺は顔で選ぶ人はあんまり…)
笑顔で好きになった奴が何を言っているんだという話だが。
「ね、イケメンいた?」
家に帰るなり俺の部屋の前で待ち構えている姉、飛鳥。
「人の顔なんて気にしていない」
「じゃあいなさそうだね」
飛鳥は手を後ろで組んだ。
「その髪型、やっぱ似合ってるね。かっこいいって言われたんじゃない?」
「…言われた」
俺は渋々答えた。
「流石、あたし。結婚相手の子にも惚れられたんじゃない?」
その言葉に俺は息を飲んだ。
「顔で選ばれたら嫌なんだけど」
「なんでよ」
飛鳥はため息をついた。
「顔しか見ないせいで彼氏をコロコロと変える馬鹿は誰ですか」
そう、この姉は中学の頃からメンクイになってしまったのだ。
最初はこの家の跡継ぎとして結婚相手を探すために彼氏を作ったはずなのに。イケメンとの行為(意味深)の快楽に溺れたのだ。
両親からの信頼を失い、俺が代わりに跡継ぎになった。
「お前みたいな人だったらって身構えるんだ…好きだって言われたけど、考えさせてって言っておいた」
「…」
飛鳥は俺を見つめた。
「ごめんね」
苦笑いをする飛鳥。
「私のせいで住菱に迷惑かけてると思ってるよ。本当に…」
俺はため息をついた。
「そんなこと言ってる暇があれば自分の部屋に戻ってくれ」
飛鳥は黙って自室に戻って行った。