8 甘えてる
「今日はたくさん抱きしめられている気がします」
瑞穂が呟いた。
「二人きりだからかな」
溜まっていた欲が今日は発散されている。
「私のこと触りすぎですよ…」
「ご、ごめん!」
俺は慌てて離れた。
(勝手に体触られるの嫌だよな…俺は馬鹿だ)
今頃になって気づき、申し訳なくなった。
「俺、調子乗ってた。ずっと嫌な思いさせていたらごめん…」
「嫌ではないですよ。とっても甘えんぼうなのですね」
からかうように笑うので恥ずかしくなった。
「そんなに私が好きですか?」
「…好きに決まってるじゃん」
今度は瑞穂の方から抱きしめてきた。
「私だって甘えたいですよ」
すると、首筋に息を吹きかけられた。
「うわっ!?なに!」
俺は驚きで震えあがった。そんな俺を可笑しそうに笑う瑞穂。
「三井さん、敏感ですね」
「は、はぁ!?」
悔しい。掌で転がされている感じがした。
(対抗する方法が良くないものしか浮かばない…!)
せめてものの対抗心で頬をつねった。
「ここまでされて手を出さない男は俺しかいません!」
「てぇだひてるじゃないでふか」
伝わっていなくて腹が立つ。でも仕方ない。
「早く寝ろよ。おやすみ」
「あ、待ってください!」
瑞穂は俺の腕を掴んだ。
「寝る前にキスしてほしいです」
「…慣れたとか言ったのは誰だよ」
文句を垂れたが頬に手が添えられた。
「つまり私はプロですよ?どんなキスも受け止めます」
「なんだそれ」
瑞穂が動いて布が擦れる音がした。吐息も近くで感じてきたと思ったら、そっと唇に触れた柔らかい感触。
「どきどきしてるの伝わってますよ」
しばらくして離れていったそれは俺をからかった。
「俺は瑞穂と違って慣れてないんだ」
俺は瑞穂に背を向けた。
「おやすみなさい」
「…おやすみ」
鼓動が激しくてすぐに寝付けなかった。




