5 いつもと違う
「ただいまー…っ!」
部屋に戻って最初に目に入ったのはベッドで眠る瑞穂の姿。座った状態から寝てしまったのか足がベッドの外に出ている。
寝苦しいはずなので、抱き上げてちゃんと寝かせようとした。
「っ…んんっ!?」
瑞穂が目を開けてしまった。
「起こしちゃったか?」
瑞穂は腕の中で顔を赤くしている。
「髪がいつもと違う…」
「?」
俺は首を傾げた。
「前髪があると…雰囲気、変わりますね」
「そういうことか」
いつも分けているので初めて見た姿だろう。
「それを言えば瑞穂だって下ろしてるだろ」
「私はそんなに変わらないと思います」
瑞穂はいつもハーフツイン。でも、やっぱり違って見える。
「いつも可愛い感じだけど、下ろすと大人っぽくなるな」
瑞穂をベッドに下ろしながら言った。
「では、三井さんはその逆です」
俺の顔を見て言った。
「いつもかっこいいのに今はなんか…なんだか…」
みるみる顔が赤くなっていく。
「すごく撫でたい」
「…?」
俺は首を傾げた。
「変なこと言ってしまいましたね…ごめんなさい」
瑞穂は顔を手で覆い隠して俯いた。
「何も変なこと言ってないよ?」
俺は瑞穂の隣に座った。
「どうぞ撫でて」
目を閉じて、頭を瑞穂に向けた。
すると、手が触れて優しく撫でられた。
「…ふふ」
小さく瑞穂の笑い声が聞こえた。
「何笑ってるんだよ」
「可愛いです。三井さん」
額に硬い物が当たったと思ったらぐりぐりと押された。
「…頭ぐりぐりするな」
「痛かったですか?」
頭が離れたので目を開いた。
「痛くないけど…」
前髪を整えながら言った。