3 近い気が
「…はぁー」
メイドが去ってからその場にしゃがみ込んだ。
(早く来てくれ…)
瑞穂だと思って出たのに違ったことが恥ずかしくていたたまれない。
顔に服が触れてはっと我に返った。
(瑞穂の服にベタベタ触る訳にいかない!)
そっと持ち上げて荷物の近くに置いた。
トントントン。
「!!」
今度こそ瑞穂だろう。嬉しくて駆け足で向かった。
「瑞穂!」
「!?」
勢いよく開けた扉の向こうにはネグリジェ姿の瑞穂だった。
いつもと違う雰囲気なのに驚いた表情は変わらない。
「三井…さん?」
瑞穂の震えた声。それは耳元ではっきりと聞こえた。
「近い…気が…」
俺は笑みがこぼれた。
「瑞穂の家行ったときは自分から抱きしめてきたのに」
「っ!それは!」
俺はもっと力を込めて抱きしめた。
「俺もそわそわして落ち着かなかった」
「からかわないでください」
口ではそう言いながらも抱き返してくれた。
「素直じゃないところも好きだよ」
「すっ…!?」
同じところで照れる姿も可愛い。
「はい。これ明日の着替え」
部屋に入れてすぐに手渡した。
「ありがとうございます…髪の毛?」
服を見た瑞穂が一本の髪の毛をつまみ上げた。
「悪い!俺のかも」
咄嗟に取り上げた。
「これは事故だから!」
しゃがんだときに偶然付いてしまっただけ。誤解はされたくない。
「事故?」
首を傾げて何も気にしていないようだった。
「平気ならいいんだ…」
考えすぎてしまった自分が恥ずかしい。
「じゃあ、一階行こう」
「はい」
瑞穂の手を取って食事をしに向かった。




