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10 言えない

「今日は私からごめんなさい…」

 放課後、瑞穂にカフェへ連れて行かれた。

「謝らなくていいんだ。濃厚な百合話ありがとうございます」

「でも…」

悲しげな顔をする瑞穂に人差し指を立てて黙らせた。

「キスがダメならほかの方法で俺が瑞穂をドキドキさせるよ」

言ったあとになって羞恥を覚えたが取り消しはできない。

「今日はずっとドキドキしていたのですが…」

瑞穂は目を逸らした。

「そういえばなんで?」

瑞穂は周りをきょろきょろ見渡した。

「昨日、大好きって言ったことが恥ずかしくて…」

瑞穂は小さく言い、顔を赤くした。

(キスでドキドキしない人が大好きでドキドキするんだな…)

瑞穂の不思議な心情に俺は苦笑いした。

「そんなに恥ずかしかったのか?」

「だ、だって…初めて言ったので」

瑞穂は俯いた。

「硝樺に大好きって言わなかったのか?」

「言った記憶はないです…好きとは言ったことありますけど」

昨日、硝樺に対して行き過ぎていると言っていたから瑞穂にも呆れるところはあったのだろうと思う。

「俺は硝樺を越えられたんだな」

「ずっと前からそうですよ」

「……くそっ。俺も言いたい」

大好きと口が開きかけた。しかし、周りを見てそれが言えなくなった。

「何をですか?」

「…い、言わない」

俺はそっぽ向いた。

「三井さんがはぐらかすなんて珍しいですね」

俺を見て瑞穂は笑った。

(言葉にするって難しいんだな…)

改めて俺は実感した。

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