7 マーキング
(ほんとに跡付けられてる…)
風呂に入ろうと服を脱いでから鏡を見て驚いた。
(誰にもバレなくてよかったな)
薄いピンクの口紅がうっすらと首元に付いている。
(ちょっと恥ずかしい)
ドレス姿を見た時に化粧は気づいていた。学校ではしていなかったので、着替えとともにしたのだろう。
こうして自分の身体にマーキングされると何とも言えない恥ずかしさがあって顔が熱くなった。
(少し付いただけだから簡単に落ちるとはいえ、初めてだから変な感じ)
口紅が付いたくらいで動揺しすぎだと自分に言い聞かせても体は熱くなるばかりだった。
翌朝、教室に入ると瑞穂がまじまじと俺を見てきた。
「どうしました?」
「落ちた?」
首を指差して言われた。
「残念ながら落ちちゃった」
「残念なの?」
瑞穂は苦笑いした。
「愛の印が消えたら悲しいでしょ」
「付けてほしいなら付けてあげるけど?」
本当のところは見つからないか緊張するから素直に頷けない。
「跡じゃなくても愛の印はあるでしょ」
そんな俺を見て、瑞穂は微笑みながら胸元を指差してきた。
「そうだね。これも二人だけの秘密か」
胸元に手を当てて、隠しているネックレスに触れた。
「これは独り言だけど…」
瑞穂は耳元に小声で語りかけた。
「私にマーキングしてほしいななんて…」
それだけ言って恥ずかしそうに弥生の席へ向かって行った。
(弥生の入れ知恵か?)
照れている瑞穂を弥生が慰めている。
(どっちなのかわからない…)
瑞穂なら本心で言ってもおかしくないと思ったが、弥生に言わされた感もあって複雑だ。