9 人間性を見てほしい
「瑞穂様にぶつかるなんて無礼者!」
「!?」
近くにいた男子生徒の集団に肩をつかまれた。
「お前、名前は」
「…」
「名前はと聞いているんだ!!」
怒鳴られても決して答えなかった。男子生徒の力は強くなるが、答えたら負けを認めることになる。
「やめてください」
聞き覚えのある声がした。
「どうしてそんなことをするのですか」
「っ…!」
声の主は瑞穂だった。男子達は黙って逃げていく。
「ごめんなさい!」
瑞穂が深々と頭を下げた。
「どうしてあなたが…」
「私と同じクラスの方達で、私をいつも追いかけてくるのです。私がいるせいであなたを傷つけてしまいました。本当に、ごめんなさい…」
そうしてまた頭を下げる。
「あなたは何も悪くないですわ」
しかし、瑞穂は頭を振る。
「自慢する訳ではないのですが、どうしても目立ってしまうみたいで…家柄で判断されるの大変ですよね」
そう笑う瑞穂の顔は苦しそうだった。
「あなたも、そのように考えるのですね…」
意外だった。安田財閥ほど大きな家なら学年どころか先生よりも上の立場でいられる。だから、もっと態度が大きい人だと思っていた。
「家柄ではなく、人間性を見てほしいといつも考えます」
「!!」
瑞穂の言葉に心奪われた。
「わかります…とても同感です!家柄で判断する人に信用なしだと思っています!」
瑞穂は目を見開いた後、ふっと笑った。
「あなたは、人の中身を見てくれる人なのですね」
「ええ、あなたのことも知りたいですわ」
そうして、硝樺と瑞穂は仲を深めていった。




