5 想い合う二人
「住菱くん、着替えたよ」
壁に背をつけながら待っていたら小さく扉が開いた。
「うん…」
先ほどのドレスのような肌が出た服から、身をしっかり温めてくれる厚い生地の服を身に纏っている瑞穂を見て安心した。
「瑞穂、ごめん」
部屋に入ってすぐ切り出した。
「何が?」
しかし、不思議そうに首を傾げられた。
「部屋入る前のこと…我慢させたでしょ」
「勝手に手が動いちゃっただけだよ。何でもないよ」
苦笑いを浮かべられて心苦しくなった。
「多いとか言って悪かった。また優しい目が急にばつが悪そうな目に変わるのは嫌だ」
「露骨にそんな態度を取った私が悪いの。余計なことしなければよかったって後悔してる」
瑞穂は左右に首を振った。
「俺のこと心から想ってくれてる人にあんな顔させたのはあってはならないことだと思う。だから、無理に我慢はしないでほしい」
少し腕を広げると、待っていたかのようにすぐさま力強く抱きついてきた。
「好き…」
小さく呟かれた。
「好き」
同じ言葉を返して抱きしめる。
「無理はしない。でも、我慢はする時は我慢する」
「いい塩梅を見つけられるといいよね」
俺は苦笑いした。
「いっしょに見つけようね」
「うん」
すると、首に唇を強く押し当てられた。
「跡付けた」
「えっ…!?」
首を触ろうとしたら手首を掴んで阻止される。
「襟があるから隠れるよ。襟が汚れたらごめんなさいだけど」
「汚れるくらい気にしないけどさ…」
なんだか照れくさい。心臓がやけにうるさいし。
「あ、でも、今日は私の家でご飯食べるんだよね。お母様とお父様に見つかったらどうしよう…」
格好良く大丈夫と言った直後にもじもじしながら心配する可愛さよ。めちゃくちゃ守ってあげたくなる。
「大丈夫だよ、瑞穂ちゃん」
「ちゃん…!?」
片手で優しく頭を撫でた。