3 花の妖精
「どう、かな…?」
俺から数歩距離を空けたところで止まった瑞穂が声を上げた。
「可愛い…可愛い通り越して美しい!」
興奮状態のまま答えた。
「パーティーの前に試しに着てみたの…。一番最初に見せるのは住菱くんだと思って呼んじゃった」
瑞穂は目を泳がせながら照れくさそうに答える。
「もう、すごく似合ってる。びっくりしすぎて語彙力失ってる」
こんなすごい姿を見せてくれたのだからもっと感想を言うべきなのに、頭が真っ白になって簡単な単語しか思い浮かんでこない。
「ありがとう…とにかく見てほしかったから」
瑞穂ははにかむように笑った。
「本物のプリンセス見てる気分」
「私、お姫様になって参加するって言ったよね。住菱くんがプリンセスみたいって思ったから私の勝ちだね」
そう言って満足気に笑う姿も綺麗に見えるのはドレスの力なのだろうか。
「綺麗すぎてびっくり」
「たくさん褒めてくれてありがとう」
瑞穂はさらに近づくと、俺の手を握った。
「住菱くんも着替えてたんだね」
「あ、ああ…家に居たし」
瑞穂が家に来る時は着替えなかったけど、普段は家に帰ると私服に着替えている。
「タキシードならもっと良かったのに」
「まさか瑞穂がドレス着て俺の前に現れるなんて思ってもなかったよ」
イベント何も関係なかった。でも、これはいい意味で期待を裏切ってくれた。
「まだお母様にもお父様にも見せてないの。メイドは手伝ってもらったから見てるけど…でも、ちゃんと完成した姿を見せたのは住菱くんが最初だよ!」
瑞穂はくるりと一回転した。
「お花の妖精かな?」
「ふふっ」
口元に手を当てて笑う姿も愛らしい。