1 不自然な誘い
「今日…夕方、家来てもらってもいいかな?」
朝から瑞穂が恥ずかしそうにしながら言った。
ちなみに、席替えをしたのでもう後ろは瑞穂の席ではなくなった。むしろ遠くなったし、弥生も近くにいない。
「いいけど…?」
なぜ夕方なのか、いっしょに帰りたいとは違うのかと疑問に思いながらも答えた。
「遅くなっちゃうかもしれないから、夜ご飯私の家で食べて行く?」
「瑞穂がいいなら食べるよ」
瑞穂は頷いた。
「何時になるかわからないけど、夕食前には連絡するね。私が連絡するまでは来なくて大丈夫だよ」
「いっしょに帰って瑞穂の家に行くのとは違うの?」
色々と不自然に思って聞いた。
「うん。準備万端の状態になってから住菱くんには来てほしいの」
ゆっくりと頷く瑞穂にますます疑問に思った。
(今日ってなんかイベントあったっけ?誕生日も全然違うし)
準備を済ませるまで家にすら上がらせてもらえないのは今までなかったことだ。
「まあ、わかった。いつでも呼んで」
「うん。楽しみにしててね」
にっこりと笑う姿に、楽しみにしててという言葉。俺がわからないだけで絶対何かイベントがある。
(バレンタイン?それは二月か…。クリスマスも十二月だし…十一月のイベントってなんだ?)
瑞穂が去ってからこっそりスマホで検索してみた。
(七五三?なんで十六歳が…)
さすがに違う気がした。
(いい夫婦の日!?絶対これじゃん!!)
俺は顔がにやけそうになるのを必死に堪えた。まだまだ先だが、すでに何か用意させているのだろうか。
(まだ結婚してないけど俺達ほぼ夫婦だもんなぁ。こんな早くから準備してくれるなんて嬉しいなー可愛いなー)
俺の気分は有頂天に達していた。これは夕方が楽しみだ。