2 言うことを聞かない
「これは変なこと考える以前の問題でしょ。簡単に胸に顔埋めていいなんて言うんじゃないんだよ、瑞穂」
「住菱くんにしか言わないのに」
「俺にも言っちゃだめだろ」
思わず笑ってしまった。
「じゃあ、肩ならいいよね」
「それは、瑞穂がいいなら…」
瑞穂が手招きするので肩に顔を埋めた。
「なんで瑞穂がうご…!!」
瑞穂が上のほうに動いたおかげで俺の頭は柔らかいクッションに当たっている。
「…だめって言ったよね?」
「住菱くんが余計なことしなければいいんだよ」
「簡単に言いやがって…!」
瑞穂は完全に油断している。俺を舐めてるとでも言うのだろうか。
「全身温めてあげたいだけだよ。それを胸がどうとか言い出す方が悪い」
「確かにそうだけど、油断させないためにそう言うしかないだろ」
「実際どうなの?何か考えてる?」
嘘でも本気の感想を言ったらもうこんなことしなくなるだろうか。
「なんていうかその……下品なんですが…フフ…本当に下品なのでやめますね」
「…何を言ってるの?」
瑞穂は心底呆れたと言うように言った。
「要するに…」
小声で言えば、
「!?」
顔を赤くして俺を突き放すと、
「まてまてまてまて!!」
布団をめくろうとしたので必死に手首を掴んで止めさせた。
(本当は嘘だってバレるだろ!!)
いや、そもそも確認されるとは思わなかった。
「これでわかっただろ!そういうことはするなって!」
「朝はしないよ。でも、朝が一番寒く感じるはずなのにもったいないね」
「二十四時間だめだよ?わかった?」
圧のある笑みで瑞穂に言い聞かせた。