1 起きてたね
(えぇ〜ちょっと可愛すぎるよ)
朝からにやけが止まらない。俺の胸に頭をつけて瑞穂が寝ているのだ。そして、なぜかご丁寧に俺の肩にはブランケットが掛けられている。
(起きてたな、これ)
大抵、瑞穂は俺より先に起きていることが多い。
寝る前にブランケットなんて使っていなかったから瑞穂が引っ張り出してきたのだろう。
(瑞穂も二度寝だな)
なんて可愛らしい子なんだろう。純粋で無防備だ。
ふと、昨日の朝を思い出した。やり返すと言ったので今がチャンスだろう。
「…」
このプリンセス、熟睡している。キスでは起きないようだ。
(可愛いから起きなくてもいいけどね)
定位置に戻って瑞穂を抱きしめた。
「おっ?」
「っ!?」
しばらくすると、急に抱き返された。瑞穂を見れば驚いた顔をしている。
「あれ…起きてる?」
「ちょっと前から。二度寝したな?」
「なんでわかるの!?」
咄嗟に俺から離れた。
「寒くならないように肩にブランケットを掛けてくれた人は誰だろー」
「さ、さあ?」
わかりやすく目を逸らす。
「なんで正直に言わないの?」
「…私です。二度寝したのも私」
瑞穂は眉をひそめながら言った。
「優しくて可愛いねぇ。俺の腕の中は寝心地良かった?」
「温かった。住菱くんの温もりを感じた」
「俺も…と言いたいところだが、良くないか」
女の胸に顔を埋めるなんてできるはずがない。瑞穂も嫌がるだろうし。
「…いいよ」
「は?」
耳を疑った。いや、承諾されても絶対に断るつもりだが。
「温かいと思うよ」
「気持ちだけで温かいので充分ですよ」
苦笑いしてやんわり断ろうとした。
「そうだね、住菱くんはすぐ変なこと考えるから余計なことはしないほうがいいかも」
瑞穂は目を逸らしてため息をついた。