12 瑞穂の癖
「何してるの?」
ブランケットのタグを口元に当てる瑞穂に首を傾げた。
「あっ、く、癖で…」
瑞穂はぱっと手を離した。
「癖なの?」
「小さい頃からの癖なの…」
瑞穂は顔を赤くした。
「小さい頃から?かわい」
「人の物なのについ…ごめんね」
「大丈夫、大丈夫。瑞穂にそんな可愛い癖があったとは」
思わず頭を撫でてしまったじゃないか。
「なんか…ブランケットのタグって触り心地が良くて、触っちゃうんだよ」
「今、唇に当ててたけど?」
もはや触っちゃうの域を超えている気がする。
「それも癖だから…!」
瑞穂は慌てた様子で答える。
(瑞穂のキス魔ぶりは物も対象なのか…!!)
思わず目を見開いた。
「もしかして、いろんな物にキスしてる…?」
「え?」
何言ってるのという顔をされた。
「ただ当ててただけなのにキス判定?」
「あ、え?」
俺の思い込みが激しいということらしい。
「でも、キスはキスか。やきもち妬いてるの?タグに?」
「それ、煽ってんのか?」
眉をひそめて苦笑いした。
「住菱くんがやきもち妬いちゃうならやらないようにする。もし当ててたら怒っていいよ」
「…いや、やきもち妬いてる訳じゃないからいいよ」
「ほんと?」
と言いながら、またタグを唇に当てる瑞穂。
(別にやきもちなんかじゃ…)
本人に煽られる(?)と複雑な気持ちになって思わず顔をしかめてしまう。
「もう、嫌なら嫌って言わなきゃだめだよ」
瑞穂が呆れたように笑った。
「別に嫌じゃない」
「嫌そうな顔で言われてもな…」
顔を背けたら瑞穂が手招きしてきた。
「こっち来て」
「…」
言われた通り瑞穂の前に立つと、頬に手を伸ばしてきた。
(今日、何度目だろう)
さすが瑞穂といったところだ。唇にしてきた。
「はい、これで文句ないでしょ?」
「あるって言ったら?」
「もう一回する?」
「…もう何度目ってなるから遠慮する」
むしろ、まだしようとしていたことに衝撃だった。