11 身を温める時期
「っは!ごめんね!!」
床に倒れてすぐさま顔を上げた瑞穂。
背中に衝撃が走ったのに頭は痛くないと思ったら、手で抑えてくれていた。
「大丈夫…それより、ありがとう」
苦笑いしてみせた。
「背中…痛いよね?」
瑞穂が俺の上から退いたので起き上がった。
「まあまあかな」
カーペットに救われただろう。それでも痛みがあるので背中をさすったが。
「ごめんなさい…」
「大丈夫だから」
悲しげな顔をする瑞穂を笑いながら抱きしめた。
すると、優しく背中をさすってくれた。
「ありがとう」
「これくらい当然…」
そうして、しばらく抱きしめてくれた。
だらだら過ごしていたら昼食になり、食べてからまただらだら過ごし始めた。
「外に出るのはめんど…いや、寒いから家でいいよ」
「家に居るのはいいけど、お昼寝するの?」
俺はベッドに寝転がった。
「寝る訳じゃない。ただ寝てるだけ」
「二度寝してたんだから寝ちゃだめだよ」
隣に寝転がりながらそう言った。
「あれ?瑞穂のほうが寝そうになってるんじゃない?」
ちゃっかり布団を被る瑞穂ににやにや笑いながら煽った。
「少し寒いから。寝る訳じゃない」
「そっか。寒いのか」
俺はベッドから降りてクローゼットのほうに向かった。
「何してるの?」
「ブランケット探してるの」
仕舞った場所をよく覚えていなかったので手こずったが、何とか見つけ出せた。
「はい」
起き上がっていた瑞穂に、もふもふな手触りのブランケットを渡した。
「クローゼットの匂いがする」
「そりゃ、一年クローゼットに仕舞ってたからな」
俺は苦笑いした。
「住菱くんの匂いがいい」
「使っていれば自然と匂いも変わるでしょ」
少し不満気にしながらも、肩に掛けた姿は実に愛らしい。