9 にゃーん
「なんでそう思うの?」
俺は床に座った。
「だって、私お姫様じゃないし…。というか、なんで住菱くんも私のこと”おひめさま”っていきなり言ってくれたの?」
俺は顎に手を当てた。
「なんとなく?」
「なんとなく…」
瑞穂は苦笑いした。
「でも、瑞穂は俺だけのおひめさまだから」
「私の真似?」
「うん」
可笑しそうに笑われた。
「私、パーティーでおひめさま…いや、お姫様になって参加する。住菱くんをびっくりさせちゃうから」
「それは楽しみだな~」
口元がほころんだ。
「だから、王子様らしくエスコートしてほしい。言わなくても住菱くんはできそうだけど」
「正直、王子様らしいってよくわかんないんだけど…瑞穂のためなら頑張るよ」
「住菱くんなら大丈夫だよ」
優しく頭を撫でられた。
「瑞穂ママだ…」
「ママ?」
瑞穂は首を傾げた。
「安心する…癒し」
「可愛いね」
頬をむにむにと揉まれた。
「子どもどころか猫みたいだよ」
「猫?」
癒されたあまり閉じていた目を少しだけ開いた。
「にゃーんだよ、住菱くん」
「言わないよ?」
俺はにやりと笑った。
「言って!にゃーん!」
「瑞穂が言ってくれるからいいじゃん」
瑞穂ははっとした顔をして口元を抑えた。
「私じゃなくて住菱くんに言ってほしいの!」
「じゃあさ…」
俺は瑞穂の手首を掴んで頬から手を離させた。
「もちもちむにむに〜」
「ふぐっ」
瑞穂の頬を揉んでやり返した。
「言うんだよ、にゃーん」
「住菱くんが言わないから言わないよ…!」
眉をひそめて対抗するのでにやけが止まらなくなった。
「にゃーんだよ、にゃーん」
「だから言わないっ…!」
歯を食いしばる瑞穂が可笑しくて声を出して笑いそうになってしまう。
「えっ…バカ?」
「ば、バカとはひどい!」
若干吹き出しながら言うのが精一杯だった。