8 阿吽の呼吸
瑞穂がもたれかかってきたのでごくりと息を飲んだ。
(何を望むんだ!?)
恐怖と高揚が押し寄せてきた。
「…」
しかし、瑞穂は一向に口を開かない。
(おかしいな?)
一方で瑞穂も、
(何もしてこない…)
お互い、黙り込んで動かないことに疑問を感じていた。
「「ねぇ」」
ぴったり息が合ったことに二人して目を見開いて驚いた。そして、二人して笑い合うのだった。
「もー真似しないでよ」
「真似じゃないよ」
なんて冗談を言いながらしばらく笑った。
「で、瑞穂は何を望むの?」
「え?」
やっと聞きたいことを言い出せた。
「ほかにしてほしいことあるんでしょ」
「してほしいこと?」
瑞穂は首を傾げる。
「あれ?なかった?」
俺も思わず首を傾げた。
「えっと…ええっと…」
瑞穂は慌てながら何か考えているようだ。
「う、ううっ…」
だんだん苦しそうな顔になってきた。
「大丈夫?」
「…こんな時に限って何も浮かばない」
瑞穂は項垂れた。
「焦るせいだよ」
瑞穂の肩を掴み、膝の裏に腕を通して持ち上げた。
「!?」
「ちょっと…太ももが痛くなってきたので…」
目を逸らして苦笑いしながら言った。
「そ、そうだよね!ずっと座っててごめんね!」
腕の中で少し暴れながら謝られた。
「なんだか…住菱くんが本物のおうじさまみたいに思えてきた…」
とりあえずベッドに下ろすと、瑞穂は足を抱えて身を縮めた。
「おひめさまを丁重に扱うことが俺の使命なので」
「私なんか全然おひめさまじゃないから!」
瑞穂は首をぶんぶん振った。