7 文句あるの?
「喧嘩売ってるの?住菱くん?」
「キスしなかっただけでそこまで怒る!?」
からかうつもりが本気で怒らせてしまったみたいだ。
「むしろ、なんでこんな時にふざけるの!意地悪だよ!」
「そうだよ、意地悪だよ」
瑞穂の肩に手を当てた。
「っ!」
「はい、これで文句ないでしょ」
ひらひら手を振って椅子に座った。
「文句あるって言ったらどうする?」
「文句あるの?」
「大有りなんだけど」
瑞穂の願いは叶えた。ちゃんと唇にキスをした。ほかに何を望むというのかね。
「何でも叶えてやろうじゃないか」
「ふーん…」
瑞穂は腕を組んで俺を見下した。
(なんだ?こんな顔見たことないぞ?)
冷たい目で俺を見下してくる。何か企んでいるような視線に背筋が凍った。
「んー…」
「…?」
しかし、だんだん冷たさが無くなっていった。
「ん、んー…」
「あのぉ…?」
口元を震わせて眉をひそめるので、こちらもどうしたのかと思った。
「瑞穂?」
「…」
静かに目を伏せる瑞穂。
「…まあ、これくらいにしてあげる」
「?」
ちょこんと膝の上に座ってきた。
(さっきの冷たい目は何だったんだ?)
もっと要求されると思っていた。しかし、意外にもそれほどでもなかったというか…諦めた結果のように思える。
(もしかして、これから要求されるのでは?あんな目をしていた瑞穂が膝の上に座る程度で満足する訳ない!)
俺は身構えた。
(本当は文句なんてないのに口走っちゃった!!)
瑞穂は何を要求するか捻り出した結果、膝の上に座ると決めたのだった。もちろん、いろいろな考えはあったが、瑞穂が遠慮してしまったことでこのような結果になってしまった。