6 どうしても着けさせて
「あーもう!着けるよ!着けさせるから貸して!!」
振り返って手を差し出した。
「あ…えっと…」
「もう着けてた!?」
瑞穂が困った顔をするので左手を見て見れば、薬指にキラリと輝くものが見えた。
「は、はい!お願い!」
何事もなかったかのように指輪を取って俺の前に出してきた。
「…ふっ」
笑いがこみ上げてきてしまった。
「わ、笑わないでよ!」
瑞穂にそう言われても笑いが止まらない。
「いやぁ面白い。そんなに着けさせてほしいんだ」
自分が瑞穂に着けさせてもらってすごく胸が高鳴った。瑞穂が動揺してしまった気持ちもわかったし、本当は今も余韻が残っている。
「それは…だって…」
「おひめさまには逆らえませんからなー」
指輪を受け取って瑞穂の前に跪いた。
「っ!!」
瑞穂はぎゅっと目を閉じた。
「目閉じてていいの?」
「また跪かれるとは思わなかったから…!」
「あれ?嫌なの?」
すると、瑞穂は眉をひそめながら少しだけ目を開けた。
「その上目遣いは私に効く…!」
また目を瞑って顔を背けた。
「そんなことしてると着けてあげないよ」
「わかった。その代わり、ベッド貸してもらうからね」
「なんで?」
俺は苦笑いした。
「住菱くんと顔合わせられなくなるからでしょ!布団の中で悶えるから!」
「そういうことならいいけど…」
自分がどうなるかまでわかった上で頼んでくるところが面白い。笑いを堪えながら指輪をはめた。
「…あれ?」
瑞穂は呆けた顔をする。
「どうかしましたか?」
「足りないよね?」
「何が足りないって?」
口元をにやつかせながらわざとらしく聞いた。
「キス…が…」
瑞穂が小さく言い始めたところで立ち上がり、ぐっと近づいた。
「と見せかけてしないんだよな〜」
「…は!?」
笑いながら背を向けると瑞穂に肩を強く掴まれた。