5 やり返し
「いいかな?」
部屋に戻ってきた瑞穂が手に握っていたネックレスを俺の前に差し出した。
「着けさせてくれって?」
「うん」
瑞穂は恥ずかしそうに頷いた。
「もちろん。遠慮せず座って」
先ほどまで座っていた椅子から立ち上がり、瑞穂を座らせた。
「住菱くんはもう着けたの?」
「うん。俺も着けさせてもらえばよかったなー」
少しだけ後悔した。
「明日着けてあげるよ」
「お、やった」
自然と口角が上がった。
「ありがとう」
首元を飾るトルマリンに触れながら瑞穂が微笑んで俺を見た。
「どういたしましたて」
俺も微笑んで返す。
「でも、指輪はまだみたいだね」
机にあるアクセサリートレイから指輪を手に取った。
「…!」
俺の左手を取って薬指に指輪がはめられた。
「…えへへ」
昨日の俺を真似するかのように手の甲にもキスをすると、照れたように笑った。
「あ、ありがとう…」
左手を握りしめて瑞穂から背を向けた。
「ほらほら~私にも着けさせて~」
後ろから抱きついてくると、目の前に指輪を見せて、煽るように振った。
「鼓動が速い…」
俺の胸に手を当てると驚いたように呟いた。
「わかったらこれ以上煽るのはやめてくれ」
瑞穂の手を退かして離れた。
「あー住菱くんが冷たーい。ひどーい」
わざとらしくため息をつきながら俺の前にあるベッドに座った。
「あ!背向けた!」
なんか頭にきたのでベッドからも背を向けた。
「自分で指輪着けていいの?」
「勝手にすれば?」
素っ気なく返すと沈黙が流れた。