1 プリンセス?
「っ!?」
唇に柔らかいものが触れて思わず目を見開いた。
「キスで目覚めることって本当にあるんだ」
目の前にあった大きな青い目も驚いたように見開いた。
「おはよう」
「おは、よう…」
寝起きなのもあって驚きがまだ尾を引いている。
昨日は夜景を見てから部屋に戻ってまた甘やかして甘やかされて寝た。そして、すっかり朝になったのである。
「住菱くんは立派なプリンセスだね」
「は…?」
瑞穂は可笑しそうに笑った。
「寝顔も可愛いからプリンセスにぴったりだよ」
からかうように笑いながら、頭を撫でようと伸ばされた腕から手首を掴んだ。
「俺のこと舐めてる?絶対やり返すから」
ベッドに打ち付けるように反対側へ倒すと、瑞穂は呆気に取られた顔をした。
「さて、起きるとしようかね」
ため息をつきながらベッドから降りた。
「なん…で、そんな真剣なの…?」
「ん?」
何か小さく言われた気がした。
「なんでもない…」
少し顔を赤くしてそっぽ向かれた。
「ほら、瑞穂も起きなさいよぉ~」
布団を引き上げた瑞穂をぽんぽんと叩いた。
「まだ待って」
頭まですっぽり布団を覆ってしまった。
「どうしたんだ?」
めくり上げようとしたら、さらに縮こまって拒否された。
「二度寝するなら俺も寝るよー」
「二度寝じゃないから」
布団を通して曇った声が聞こえた。
(全く心当たりがないけど…これは照れ隠しだな)
不思議だ。今あった会話の中に照れるような部分は無かったはずだ。
(大丈夫になるまで待ってあげるか)
ベッドにもたれながら床に座って、瑞穂が起き上がることを待った。