13 好きな人と見たい景色
立ち並ぶビル、夜でも明かりを灯している建物や車、信号の数々。生まれてから夜の外の景色はずっとこれだ。わざわざカーテンを開けて見る必要もなく、動くことがないこの景色は見ていると飽きてしまうものだと思う。それでも時々見てみたくなったり、好きな人に見せたいと思うのは綺麗だと少なからず思うからだろう。
(実際、喜んでくれているみたいだし)
瑞穂は夢中で景色を見ている。俺は続けてほかのカーテンも開けていった。
ここは大広間。パーティーを開くならここが会場になる場所だ。大きなガラスが何枚かあって、カーテンを開ければ外の景色が覗く。明かりをつけるのもいいけど、カーテンだけ開けて夜景を楽しむのもいいと思っている。
(久しぶりに来たからこの夜景も久しぶりなんだけど)
普段なら絶対入らない部屋だ。広いだけで何もない部屋になんか入る必要がない。
しかし、今日は飛鳥がいないから家の中をうろちょろして咎められることもない。せっかくなら自慢できることを自慢しようと思った。
「ねぇ、この部屋の正体はもしかして大広間?」
「正解。うちはパーティーを開く予定がないから、瑞穂にここを見せる機会がないだろうと思ったから見せたかった」
外の明かりが入ったので全体的に少し部屋が明るくなった。瑞穂の姿もはっきりと見えるので、すべてのカーテンを開けてから瑞穂の元へ戻った。
「いいね。私の家とは違うよ」
「だってここは俺の家だから」
瑞穂は小さく笑った。
「こんな立派な場所があるのにパーティー開かないなんてもったいないな」
「それは親に言ってくれ」
「でも、静かにここで景色を見てるのもいいかも」
手を後ろで組んで窓の外に向き直る瑞穂。俺も隣で静かにビルを見上げた。