12 燦然と輝く景色
「明日も明後日もこんな風に甘やかされて過ごすのかな?」
瑞穂が笑いながら言った。
「お望みならいくらでも甘やかしますけど?」
「もちろん甘やかされたいけど、甘やかしすぎにならない?」
「ならない!」
俺が笑うと瑞穂も可笑しそうに笑った。
「この感じ、好きだなぁ…」
目を閉じてじっくり噛み締めるように言った瑞穂。
「でも、体が怠けちゃうよね」
困ったように苦笑いした。
「何?今日はやる気ですか〜?」
「…この変態」
「あたっ!」
腹を拳で叩かれた。
「じゃあさ、連れて行きたい場所があるんだけど」
「こんな時間に?」
「あ、家の中だよ」
俺は立ち上がった。
「来て」
「いいよ…?」
不思議そうにしながらも俺の手を取ってくれた。
「わ、真っ暗」
やって来た部屋の扉を開けると、瑞穂が少し驚いた声を上げた。
「最近使ってないからね。でも、暗い方がちょうどいい」
瑞穂が離れないようにぎゅっと手を握りしめながら、部屋の中へ進んだ。
「んー…これだ」
手探りで壁を触って、カーテンを引っ張った。
「わぁ…!」
少し開けただけでも見える外の景色に、瑞穂は感嘆の声を漏らした。
カーテンを完全に開けると、それは目を見張る光景が広がっていた。
「すごい…」
輝くビルが立ち並ぶ景色。暗い部屋から見ると、とても眩しく感じた。
「屋上にある露天風呂には及ばないけど、まあ綺麗だよね」
高いビルが多いから高い場所から見たほうがきれいに感じると思う。しかし、ここは二階。景色を見るには少し低く感じる。
「そんなの贅沢だよ。ここからでもすごく綺麗でしょ」
俺の方を見て不満気な顔をする瑞穂。
「喜んでくれてるなら良かった」
正直、この景色を見られている時点で贅沢なのだが。俺達にとっては当たり前の景色なのでそれは言わないでおく。