11 怒らないとだめだよ
「住菱くんには悪いけど、なんかもやもやするから八つ当たりした」
「可愛いから許すけど…」
目を逸らす瑞穂に苦笑いした。
「だめだよ住菱くん…私を甘やかしちゃだめだよ…」
ため息をついて俯いた。
「怒ってほしいってこと?」
「八つ当たりしたのは私だから怒られないといけないでしょ」
俺は少し考えた。
(こういう時、何をすればいいのだろう。怒鳴るか、からかうか、お仕置きという名の行為に誘うか。そもそも、こんなことで怒る必要あるのか?別に怒ってないし。怒り方考えるくらいなら怒る必要ないし)
気づけば腕を組んで真剣に考えていた。
「住菱くん?」
「悪い。怒り方考えてた」
「え」
瑞穂は顔を青くした。
(ビビってるのか?怒鳴ったりしたら怖がられそうだからやめたほうがいいか)
俺は一人頷いた。
「やっぱ怒ってないなら甘やかしてほしい。今更怖くなってきた」
「それはずるいでしょ。そんなのだめだよ」
逃げようとするなら気が変わった。これは叱るべきだ。
「いたっ!」
髪を退かして瑞穂の細い首に後ろから噛みついた。
「これが住菱くんの怒り方なの?」
離れると、不思議そうに振り返ってきた。
「どうだろうね…?」
自分でもわからない。咄嗟に体が動いてしたことだった。
「…わかった」
瑞穂は首を抑えて目を逸らした。
「あ、痛かった?ごめん、冷やす?」
「大丈夫」
瑞穂は首を振った。
「住菱くん、全く怒る気ないでしょ」
「ばれたか」
俺は苦笑いした。
「そもそも怒ってなかったし、こんな可愛い子を怒ることなんてできないよぉ〜」
抱きついてわしゃわしゃ頭を撫でた。
「良いのか悪いのかわからなくなった」
瑞穂は少し不満気だったけど、安心しているようにも見えた。