9 大人びた子ども
(子どもと言うにはデカすぎるんじゃないか?)
いっしょに風呂に入って思った。
「どうしたの?」
「随分と大人びた子どもだなと思った」
「子どもって言っても十六歳だし」
瑞穂は苦笑いした。
「十六歳にしてもいろいろと大きいなと思って…」
「…そういうこと言うんだ」
そっぽ向かれて自分の失言に気づいた。
(また身長の話するところだった!)
怒らせるとわかっているのに口に出してしまいそうになる自分が心底嫌になった。
「はぁ…」
俺から顔を背けて足を抱えた。
「ごめんって」
「住菱くんも…男の子…だからね」
(…ん?)
俺は目を見開いた。
(勘違いされてる?)
一体、瑞穂は何を考えているのだろう。
「たぶん、俺は瑞穂が思っているような意味で言ってないんだけど?」
「え?」
俺達は顔を見合わせた。
「やだなぁ~瑞穂ったら変なこと想像しちゃって」
「…!嘘つかないでよ!」
瑞穂は顔を赤くして拳を握りしめた。
「それが嘘じゃないんだよな~。感謝してほしいな~」
「なんで感謝しなきゃいけないの!意味わからないから!」
必死に訴えるので思わず笑ってしまった。
「可愛い可愛い。さ、もう出ようぜ」
肩をぽんぽんと叩いて風呂から上がった。
「ふんっ!」
「うわっ!?」
部屋に戻ると、瑞穂が飛びついてきた。勢いが強かったので、バランスが崩れて倒れるところだった。
「なんで!」
「え…?」
瑞穂が驚いた顔をするのでこちらもあっけらかんとなった。
「なんで倒れないの!」
「なんでって…危ないからでしょ」
理由のわからないことを言う瑞穂に苦笑いした。
「もう、やだ」
瑞穂はそっぽ向いた。