7 寂しい訳じゃない
「あ、そうだった。飛鳥さん居ないんだよね」
ダイニングルームに入って瑞穂が思い出したかのように呟いた。
「二人で食べるのもいいよね〜」
「住菱くんは寂しくないの?」
瑞穂は苦笑いした。
「全く。瑞穂がいるし」
「そっかぁ。一人だと寂しいから私を呼ぶんだね」
「違うし!」
瑞穂がにやにや笑ってきたので必死に否定した。
「二人きりで過ごせるチャンスだから呼んだだけだし!寂しくないから!」
「強がらなくていいのに」
くすくす笑ってきて思わず歯ぎしりした。
「大丈夫。私は傍にいるから一人にさせないよ」
優しく微笑まれて、ぐうの音も出なくなった。
「私ね、住菱くんに言ってないことがあるの」
夕食を食べながら瑞穂が言い出した。
「何?」
「近々、私の家でパーティーを開くかもしれないの。まだ決まった訳じゃないんだけど」
俺は驚いて目を見開いた。
「ほんと?絶対行くよ」
「もちろん、決まったら招待する。それで、そんな話もあったから…おひめさまって言われて過敏に反応しちゃった…」
瑞穂は顔を赤くして目を逸らした。
「パーティー開けるような家の娘なんだから、瑞穂はおひめさまみたいなものでしょ」
俺は小さく笑いながら言った。
「そういうことじゃなくて、何も言ってないのにまるで知ってたみたいだからびっくりしたの。でも…それ以上に住菱くんがかっこよかった…」
だんだん声が小さくなって聞き取りにくくなったが、恥ずかしそうにしているのでもう一回言ってとは言わないことにした。
「なんか、思い出したら恥ずかしくなってきたな」
いくら財閥跡継ぎでも、大げさ過ぎたと思う。彼女の前で跪いて指輪をはめ、さらに手にキスまでする男子高校生など今の時代に存在するのだろうか。