3 下校もデート
「金曜日って疲れるね」
放課後、瑞穂があくび交じりに言った。
「眠いの?」
「ちょっとね」
瑞穂は苦笑いした。
「じゃあ、帰ったら寝るか。瑞穂が寝るなら俺も寝たい」
「うん。いっしょに寝ようね」
くすくすと笑う瑞穂の手を握って教室を出た。
「あ、住菱くんの家に行く前に私の家行ってもいいかな?」
歩きながら思い出したように言われた。
「いいよ。でも、なんで?」
「指輪取りに行きたいの。せっかく三日間も住菱くんと居られるんだから、いっしょに着けていたほうがいいでしょ」
俺は思い切り頷いた。
「喜んで俺も着けるよ!瑞穂は俺の妻だね」
「実際、妻になるんだけどね」
瑞穂が可笑しそうに笑うのでつられて俺も笑った。
「なんだよ、幸せそうにしちゃって!」
後ろから背中を叩かれて、思わず身震いした。
「いてーよ國元!」
振り返ってからかうように笑う國元を睨みつけた。
「お前は彼女と帰れて羨ましいなぁ!」
「國元こそ、これから彼女に会うんだろ」
俺はため息をついた。
「俺も飛鳥と下校デートしたいぜ…」
「今デートしてるのは俺なんだ。先に帰らせてもらう」
「幸せそうなカップルを見たら話しかけずにはいられなくってな。じゃ、飛鳥は三日間貸してもらうからな〜」
國元が手を振ったのを見て、小走りした。
「下校でもデートって言うんだ!」
慌てたようについてくる瑞穂が驚いたように言った。
「デートって言えばデートなんだよ!」
ある程度國元から離れたところで、走るのはやめた。
「じゃあ、私達ほぼ毎日デートしてるね!」
少し息を切らしながら、瑞穂は笑顔で言った。
「そうだ…ね」
突然、瑞穂が俺の腕を掴んでもたれかかった。
「ちょっと疲れたー」
「急に走り出してごめん」
でも、距離が近づいてちょっと嬉しいと思ってしまった。瑞穂には悪いけど、心の中でひっそり可愛いなと思って口元がほころんだ。