1 飛鳥を連れ出してくれる人
「明日、國元の家に泊まってくるね」
夕食の時に突然言われたその言葉。
「まじ?よっしゃ」
俺は心の中でガッツポーズした。
「なんで喜んでるのかな〜?」
圧のある笑顔で飛鳥が言った。
「瑞穂呼んで泊まらせるから。いやぁ、國元さすがだわ」
國元と話してから数日。まさか、こんなに早く飛鳥を連れ出してくれるとは思わなかった。
「てか、明日金曜じゃん。土日も泊まっていけば?」
もちろん、そうなれば瑞穂も泊まらせる。
「どうせ瑞穂ちゃんと泊まりたいだけでしょ。まあ、いいよ。あたしも楽しんでくるから」
「そのまま國元の家に住んでもいいけど」
「お姉様はもう要らないの!?」
俺が冗談混じりに言うと、飛鳥は目を見開かせた。
「正直要らないね。俺には瑞穂がいるから」
「生意気な弟…。お姉様傷ついた」
「ふーん」
適当に返すと睨みつけられた。
「可愛げがないね。ほんとに國元の家に住んじゃうかもよ?」
「住めば?俺も瑞穂を住まわせるつもりだから、どうぞお勝手に?」
「あーやだ。嫌な弟ー」
飛鳥はつまらなさそうな顔をした。
「こんな男をデレデレにさせた瑞穂ちゃんは人たらしだね」
途端ににやりと笑った。
「瑞穂は俺だけに好かれていればいいんだ。なのに…」
ふと誠を思い出してしまった。
「瑞穂ちゃんがモテるのは仕方ない。あんな可愛い子、モテない訳がないでしょ」
飛鳥は腕を組んで悟ったように言った。
「ほんと。小学生の頃からめちゃくちゃ人に好かれていたらしいし」
思わずため息をついた。
「根っからのいい子か。住菱の将来は安心だけど、誰かに取られないようにするのは大変そうだね」
「取られることはない。俺が絶対に離さないから。瑞穂も絶対に俺から離れないだろうし」
食い気味に答えた。
「自信満々だね。かっこいー」
飛鳥が可笑しそうに笑うので、俺は顔をしかめた。




