11 二人のために
「郁助、寒さを理由に手を繋いでもらうのはどうだ?」
翌朝、昨日の帰りに話したことを郁助に伝えてみた。
「だ、だから!硝樺さんに触れるなんて恐れ多くてできないよ…!」
顔を赤くして慌てる郁助。
「なんでそうなるんだよ…俺だって硝樺の顔触ったこと何度かあるんだぞ?」
「はぁ!?なんで住菱が触っているんだよ!」
歯を食いしばって睨まれた。
「おい、喧嘩はすんなよ?」
國元も苦笑いする。
「お、落ち着いてくれ。郁助を怒らせるつもりはなかったんだ」
手を上げて許しを請うった。
「そんなに控えめにならないで、もっと気軽な気持ちで接してみればと思ったんだ。そんなこと言ってると、ずっとそのままになるぞ?」
「…」
郁助は黙り込んだ。
「瑞穂が言ってたんだ。手を繋ぐのは楽しくて、嬉しくなるって。二人に教えたいって言ってたよ」
「…僕が硝樺さんの手を繋いでもいいのかな?」
不安気な顔をして見つめてきた郁助に、うんと頷いた。
「もっと勇気を出せ。お前なら大丈夫だ」
「…うん。わかった。頑張ってみる」
小さく頷いて、微笑んだ。
「すし、お前立派だな」
「まあ、お前達とは付き合いの長さが違うので」
ふんと鼻で笑った。
「自分だけめちゃくちゃ幸せだからって調子乗るなよ~」
笑いながら肩組された。
「郁助さんに言ったんだね」
教室に着き、登校中の話を瑞穂に伝えた。
「うん。これで二人にも進展があるといいよな」
俺も笑いながら席に座った。
「なんだか、私達やけに偉そうに色々言っちゃてるけど大丈夫かな?」
瑞穂は苦笑いした。
「大丈夫だろ。笑って流してくれてるし」
茶化されてるくらいだから特に気にすることないだろう。
「不快に思われてないなら…いっか」
瑞穂も俺につられるように笑った。