9 仲良しな二人
「大好きだよ。硝樺さんのことが」
顔を上げてはっきりと告げられた。
「言えるんだから充分仲良しだろ」
「そうかな…?」
郁助は照れたように笑った。
「でも、まだまだ二人には及ばないよ。僕にとって、二人は憧れの存在なんだ」
そう言って微笑んだ。
「絶対に切り離せないように見えるんだ。住菱も当たり前に安田さんのことを好きって言ってるし、安田さんも住菱のこと好きってことがよくわかるよ。誰が見ても一目見ただけでそう思わせるような関係に、僕も硝樺さんとなりたい」
俺は頷いた。
「郁助がそう思ってるなら絶対なれる。というか、もうなってるんじゃない?はっきり言えるんだから」
「住菱が言うなら…信じてもいいかな?」
少し不安気にする郁助に微笑んだ。
「信じろ。大丈夫だ」
郁助は目を見開いてはっとしたような顔をした。
「うん。信じる」
頷いて顔をほころばせる郁助を見て、笑みがこぼれた。
「そろそろ帰ろうかな」
ドリンクを飲み終えた郁助が言った。
「お先にどうぞ。私と住菱くんはまだここに居ます」
「え?」
郁助が帰るなら帰ろうと思ったのだが、瑞穂は違ったようで驚いた。
「住菱くん、いいかな?」
「い、いいけど…」
不思議に思いながらも頷いた。
「じゃあ、僕は先に帰らせてもらうよ。また明日」
郁助は手を振ると、店を出て行った。
「郁助さんにも仲が良いって言われて嬉しかった」
瑞穂は俺を見て微笑んだ。
「これからもずっと仲良しでいようね」
そう言って、手を差し出した。
「もちろん。これからもよろしく」
ぎゅっとその手を握りしめた。