6 郁助を呼び出す瑞穂
「瑞穂、郁助呼んできてほしい」
放課後、郁助とも話したいので一緒に帰ろうと思った。しかし、俺が二組の教室に入ると騒がれるので瑞穂に呼び出しを頼むことにした。
「い、郁助さんいらっしゃいますかー…?」
瑞穂は恥ずかしそうに扉から教室の中を覗き込んだ。
「安田さん…?」
教室から郁助の声がした。
「私達と一緒に帰りませんか?」
「あ、住菱も居たのか。はい、いいですよ」
こちらに近づいて俺の存在に気がつくと、瑞穂に向き直って頷いた。
「三菱くん…安田さんと友達なの?」
その声に、思わず背を向けていた扉から振り返って教室を見た。
「友達だよ」
「でも、あの子三井さんの彼女じゃないの?何の話してたの?」
数名の女子が瑞穂を睨むような目で見ていた。
「郁助ー早くしろよー」
「住菱!ちょっと待ってってば」
瑞穂の肩に手を置いて教室を覗き込んだ。
「二人と帰ることになったから。バイバイ」
「ま、また明日…」
「バイバイ」
郁助は鞄を持って笑顔で女子達に手を振った。それに女子達は呆然とした顔で力なく手を振り返す。
「お待たせ。行こうか」
教室を出ても俺達に笑顔を向けてきた。
「もう、住菱が呼んでくれればよかったのに。なんで安田さんに任せたわけ?」
「俺が二組に入っても騒がれると思ったんだが…瑞穂に任せるほうが良くなかったな」
俺は瑞穂に向き直った。
「ごめん。危うく勘違いされるところだったな」
「大丈夫だよ。すぐに住菱くんが出てきたから何も問題ないって」
瑞穂は苦笑いした。
「で、急に僕を呼んでどうしたの?」
「郁助は硝樺とどんな付き合い方してるのか気になったから話そうと思ったんだ」
俺は自信満々に答えた。