14 もう少し…いや、
「さて、帰ろうかな」
今日は土曜日。支度を済ませるとすぐに弥生は帰ろうとした。
「瑞穂は?」
「私は…もう少しだけ居たい」
「わかった」
恥ずかしそうに言う瑞穂に、優しく微笑みながら頷いた。
「いろいろお世話になりました。ありがとう、三井さん」
「いろいろってほどでもない気はするが」
苦笑いしながらも、礼をする弥生にこちらも頭を下げた。
「じゃ、ばいばーい」
瑞穂といっしょに弥生を見送った。
「…っ!瑞穂?」
部屋に戻ると、後ろから抱きつかれた。
「んんん~!!」
瑞穂は俺の肩甲骨あたりに顔を埋め、頭を左右に何度か振った。
「ど、どうしたんだ?」
質問には答えないまま、首振りはしばらく続いた。
「っは!」
ようやく離れたので瑞穂の方を向いた。
「住菱くんに甘えてからじゃないと帰れないから!」
瑞穂は無邪気に笑ってみせた。
「ああ~可愛い!!ほんと可愛い~!」
瑞穂を抱きしめ、肩に顔を埋めて額をぐりぐりと押し付けた。
「住菱くんもすごく可愛いよ」
笑いながら背中をさすってくれた。
「やっぱ二人きりが一番楽しいよな」
落ち着いてからベッドに腰掛けた。
「そんなこと言われると帰る気が失せちゃうよ」
「じゃあ、帰らなければ良くない?明日も休みだよ」
俺は瑞穂の顔を覗き込んだ。
「また泊まっていいの?」
「もちろん!」
笑顔で頷いた。
「今週はたくさん泊まってるね。住菱くんがずっと傍に居てくれて嬉しいよ」
優しく微笑む瑞穂に思わず見惚れてしまった。
「早く俺とこの家に住んでほしいよ」
「住むことができたら毎日幸せだろうね」
瑞穂は可笑しそうに笑った。