4 一目惚れかよ
あっという間に放課後。入学初日だから時間もなくて安田の人柄は掴めなかった。
(まあ、恥ずかしがり屋で奥手っぽいんだろうな)
悪い人ではないみたいなだけ良かっただろう。
「安田さん、一緒に行きましょう」
「は、はい」
安田に声を掛けて教室を出た。
安田は俺から数歩、距離を開けながら歩いている。俯いて、緊張しているのが目に見えてわかる。
(なんか、申し訳なくなってくる…)
知らない男に連れて行かされている感が否めない。
「ここです」
俺は店の前に立ち止まった。
「どうぞ」
扉を開けて先に入るよう、手で促す。
「ありがとうございます」
小さく礼をして中へ入って行った。
「三井さんもお付き合いの話はお聞きになっていますか?」
席に座って、ドリンクを一つずつ注文してから聞かれた。
「はい。両親から結婚を前提にお付き合いをと伺っています」
「そうですか…」
安田は俯く。
そうだよな。やっぱり見ず知らずの人間と付き合うなんて
「好きです。三井さん」
顔を上げてしっかりと言った。
「…え」
その言葉に、俺は呆然とした。
「私、恥ずかしながらも恋愛経験が一度も無いのです。しかし、三井さんの男らしい容姿や先生の話を真面目に聞かれる姿に惹かれて私…好きになってしまいました」
少し早口で話す安田に俺は圧倒された。
(でも、それってほぼ一目惚れってことだよな?)
クラスの女子どころか男子にもイケメンと言われた俺。安田も容姿だけで俺を判断している可能性はある。
「すみません。容姿だけで決めるなら俺は付き合えません」
「え…」
安田の表情が曇った。