12 触れる
曲も終わり、俺たちは動きを止めた。向かい合って呼吸を整える。
「三井さん」
瑞穂が小声で言ったので何かと問おうとした途端、瑞穂の唇が触れた。
少しして歓声が上がった。お互いそっと離れた。
「…」
瑞穂の顔を見れば案の定顔が赤くなっている。自分からしてきたのに。
「ごめんなさい…私、いきなり…」
瑞穂の口元に人差し指を立てて黙らせる。
「言い訳なんてしなくていいから」
俺は観客に礼をした。瑞穂も急いで礼をする。
ホールが歓声や拍手で包まれた。俺は瑞穂の手を取り、この場を離れた。
「やっと二人きりだな」
ホールの端の方にあるカーテンの後ろへ俺たちは隠れた。
「さ、さっき…」
「急に暗くなったりして驚いたな」
言い訳を始める前に話を逸らす。
「私も知らなかったです。でも、楽しかったかも…」
目を合わせずに言う瑞穂。しかし、俺の顔をちらちらと見てくる。
「ねぇ。誰も見てないしもう一回しない?」
「えっ!!」
目を見開いて大きな声を上げる瑞穂。
「…い、いいですよ」
目を閉じてそっと口づけする。さっきよりも落ち着いているので集中することができる。
しばらくしてから離れ、瑞穂を見つめる。恥ずかしそうに見つめる姿が愛らしくて、抱きしめた。
いや、本当は俺も顔が熱くなったので隠したかったからだ。
「三井さん、私みたいじゃないですか」
「一番言われたくなかった」
ぎゅーっと力を込めた。
「ううっ…苦しいです…」
俺は笑って離れた。




