3 はじめまして
「あ、あの…」
恥ずかしげに安田が話しかけてきた。
「安田さん、はじめまして。三井住菱です。両親から話は聞いております」
「安田瑞穂です。はじめまして…」
目を泳がせながら話す。けっこう恥ずかしがり屋なのだろうか。
「あの、ずっとお話できないかなと考えておりました」
それはそうだろう。お互い初対面なのに付き合うって話をされているのだから。
「お…僕も考えていました。今日は早く帰れるので放課後、よろしければどこか行きませんか?お互い話したいことはあるでしょうし」
(あぶねー。素が出て俺って言いかけた)
安田は小さく頷いた。
「はい。では、近くのカフェはどうですか?」
「それがいいですね。では、また後で」
「はい。また…」
安田は小さく礼をして席へ戻って行った。
「…」
その間、周りの視線がとても痛かった。
スタイル抜群の美少女と入学初日から話す男。何者だよお前という鋭い視線を男子から感じる。
(何者って三井財閥の跡継ぎだよ)
しかし、俺はその事実を決して言わない。俺が他人に財閥の息子であることを知られたくないからだ。
この学校は一般人が多い。金持ちが集まるような学校ではなく普通の学校を選んだのもそんな理由。
(つまり安田も…)
わざわざ受験したのだから何かしら理由があるのだろう。無理に聞かないでおくが。
「やっぱ美人はイケメンが好きか…」
その声に俺は振り返った。
「あれには勝てないよな」
明らかに俺のことを見ながら話している。
(そりゃ、どーも)
俺は前に向き直った。