9 好きな表情
「男って結局顔だと思う?」
「なんで私に聞くの」
学校に着いて弥生に聞いた。
「恋愛マスターみたいだから」
「三井さん男なんだから私に聞かないでよ…」
弥生は呆れたようにため息をついた。
「俺は顔というより表情で好きになるから」
「え、そうなんですか?」
隣に居た瑞穂に聞かれた。
「てことは、瑞穂ちゃんも表情で惚れた?」
「…まあ」
俺は目を逸らした。
「へ~知らなかったです!」
「どんな表情に惚れたの?」
弥生が俺に詰め寄った。
「それは言えないだろ」
「聞きたいです!」
瑞穂まで顔を輝かせた。
「笑顔だよ…」
「おおー!!」
弥生が拍手した。
「瑞穂ちゃん、笑顔可愛いもんね~!私はね~恥ずかしがってる瑞穂ちゃんが好きだよ!」
「え、えぇ…」
瑞穂は顔を赤くして戸惑った。
「ほらほらその顔!可愛いと思わない?」
「思ってるけど笑顔が一番可愛い」
「そんな真面目な顔で言わないでくださいっ!」
頬に手を当てて俺達に背を向けた。
「瑞穂ちゃんかっわいい~!!」
弥生が瑞穂に飛びついた。
「瑞穂ちゃんも三井さんの好きな表情あるの?」
「え、えぇ…私は…」
ゆっくりと俺の方を見た。
「常にかっこよくて好きですけど、私に甘えてくれている時の顔が好きです」
「え!?三井さん甘えたりするんだ!!」
弥生が俺の方を見るとはっとした顔をした。
「確かに、瑞穂ちゃんのこと抱きしめてたよね!」
「俺の恥ずかしい話が始まるなら席に戻る」
「えぇ!?」
二人に背を向けて自分の席に向かった。