7 後ろの席の人
昼休み、俺は瑞穂に声をかけた。
「今日、弁当は空き教室で食べないか?」
昨日は教室で食べたが、鍵が掛かっていない空き教室を見つけた。
「勝手に入っていいのでしょうか?」
「たぶんダメだけど…大丈夫だ!」
教室は騒がしいし、二人きりになりたいと思った。
「怒られても知りませんから…!」
瑞穂は、弁当を持って俺についてきた。
「二人きりのほうが過ごしやすいな」
空き教室に入り、俺達は机に弁当を置いた。
「黒板に落書きしてみるか?」
「ば、ばれたらどうするのですか!」
瑞穂は慌てて俺を止めようとした。
そのとき、突然扉が開いた。
「えっ」
俺達を見るなり驚く一人の女子。
「す、すみません。邪魔するつもりではなかったんです!!」
「弥生さん、大丈夫ですよ。それより、教室使いますか?」
「あ、いや、私はいいので…失礼します!」
走って出て行ってしまった。
「本当は使いたかったでしょうに…申し訳ない…」
瑞穂は困ったような顔をした。
「知り合いだったのか?」
「後ろの席の方なのです。いつもおしとやかで」
「そうなのか。全くクラスメイトなんて覚えていない」
思い返せばこの数日間、瑞穂としか話していない。正直、人と関わろうとも思っていないが。
「できればお友達になりたいのですが邪魔してしまうのは良くないかと思って」
「話してみればいいんじゃないか?」
「いいのでしょうか…」
手を握り締めて不安げな表情を浮かべる。俺は瑞穂の肩に手を置いた。
「きっと大丈夫だ」
「…はい!」
瑞穂はにっこりと笑った。うまくいってくれることを願う。