12 ちょっとってなんだよ
「私の余計なお世話でしたね」
「でも、瑞穂に駅でキスされかけるのは悪くなかったぞ」
「あ、キス!」
瑞穂は目を見開いた。
「さようならとおやすみのキスができていないですよ!今日はしてもいいんですよね?」
「あ、ああ…」
俺は目を逸らした。
「照れてますね?」
「思っても言うなって」
クッキーの箱にふたをして机の上に置きに行った。
「…やっぱ食べたいな」
「犯罪なんですよね?」
「違う」
俺は振り返ると瑞穂に飛びついた。
「瑞穂のことを食べたいなー」
「す、住菱くん…くすぐったい」
飛びついた勢いで倒れた瑞穂の脇腹をくすぐった。
「俺に甘えてほしかったんじゃないの?」
「甘えて…ほしいですけど…それより、それやめてください!」
肩を掴んで引き剥がされてしまった。
「急に体が軽くなりましたね」
「…俺には筋肉があるから重いんですー」
瑞穂に背を向けて寝転がった。
「そうですね、知ってますよ」
「!!」
後ろから手が伸びてきて、俺の胸から腹にかけて指先が撫でた。
「変な触り方するな」
瑞穂は可笑しそうに笑った。
「細いけどちょっとは頼りになりますね」
「ちょっとってなんだよ。國元のほうが頼りになるってか?」
瑞穂の頬を引っ張った。
「そんなこといってないです」
「そうだよな。そんなこと言われたら俺、何も言い返せなくなるから」
瑞穂から手を離した。
「住菱くんが國元さんに筋肉の量で負けるのは当然のことです」
「すごく傷ついた。キスするのやめようかな」
「それは嫌です!」
顔を背けようとしたら頬を押さえられた。
「冗談だって」
瑞穂の手をどけ、自分からキスをした。