11 夜にクッキー
「そろそろ秘密を教える時間ですね」
風呂からも上がってベッドに座っていると瑞穂が鞄を漁り始めた。
「これです」
俺の方に振り返ると、小さな紙袋を持って俺の隣に座った。
「どうぞ」
「…これは?」
手のひらより少し大きいくらいの箱を渡された。丁寧にリボンまで巻かれていた。
「なんだと思いますか?」
「食べ物?」
焼き菓子の匂いがする。
「開けてみてください」
リボンを解き、ふたを開けてみれば個包装されたクッキーが何枚か入っていた。
「おお、クッキー!」
「クッキー好きですか?」
「うん!」
嬉しさで一枚手に取ってみた。
「…って、夜に食べ物渡すとか犯罪だろ」
太るだろうし歯も磨き直さないといけなくなる。
「そんな法律ないですよ」
「いや、夜に甘いものを食べるのはれっきとした犯罪だ!」
瑞穂は可笑しそうに笑った。
「実は、これだけではないです」
「え?」
俺は首を傾げた。
「そのクッキーはおまけです。後で食べてもらえればいいです。本当は、指輪を見に行ってました」
「指輪ってお揃いの?」
「はい。色々調べて実物も見に行っていいものを見つけられました。今度、一緒に見に行ってくれませんか?」
俺は笑顔で頷いた。
「うん。瑞穂が気に入ったものなら俺も見たい。でも、なんで俺と探してくれなかったんだ?」
「この間、時間がかかったのに決まらなかったので。ある程度決まってから住菱くんとは見ようと思いました」
「時間はかかってもよかったのになぁ…一緒に居られる時間が長くなるから」
瑞穂は目を見開いた。
「でも、疲れなかったですか?」
「疲れより瑞穂と居られるほうがいい」
瑞穂は安心したように笑った。