8 甘えないの?
「瑞穂ちゃ〜ん!!」
家に帰るなり飛鳥が瑞穂に飛びついた。
「今日は楽しんでね〜」
「は、はい…」
瑞穂は勢いに押されて苦笑いした。
「俺の瑞穂から離れろ」
「えー」
飛鳥の肩を掴んで剥がした。
「俺のなんて…住菱も溜まってたんだね」
にやにや笑う飛鳥を無視して瑞穂の腕を掴み、自分の部屋へ向かった。
「うわっ!」
瑞穂は鞄を置くと後ろから抱きついてきた。
「いくらでもしていいって言いましたよね?」
「そうだけどさ…」
抱きしめる力がどんどん強くなっている。
「苦しいですか?」
「苦しくはないけど…いきなり過ぎない?」
「今日は住菱くんから離れませんよ〜」
そう言ってまた力を強める。
「やっぱ苦しい…」
瑞穂は可笑しそうに笑うとゆっくり離れた。
「?」
左腕だけ掴んだまま。
「本当に離れないんだね」
「はい」
瑞穂はにっこりと笑った。
「ま、いいけどさ」
俺はベッドに座った。隣に瑞穂も座る。
「秘密、いつ教えようかな〜」
「もう教えてくれるの?」
「はい。でも、まだ早いような気がしますねぇ」
瑞穂はくすくすと笑った。
「教えてほしいな〜」
「えー?」
笑っているところを見たらこっちも笑いがこみ上げてきた。
「…」
俺の肩にもたれかかった。
「住菱くん、私に甘えないんですか?」
「え?」
「私より住菱くんのほうが甘えていたじゃないですか」
「瑞穂が俺に甘えるから俺が甘えられない」
瑞穂は眉をひそめた。
「甘えてほしい〜」
「甘えてるのはどっちだ!」
また俺に抱きついてくる。
「甘えてもらえなかったらどれだけ寂しいかわかってください!」
ぱっと手を離して俺から離れた。