4 瑞穂の用事って何
『住菱くんのことを考えることはそんなにいけないことですか?』
瑞穂が声を震わせながら聞いた。
「全然いいよ。むしろ嬉しいくらいだけどさ、突然だなって」
『最近、よく住菱くんのことを考えてしまうんです』
吐息交じりに瑞穂は言った。
『もちろん、毎日住菱くんのことは考えていますよ。でも、最近はもっと考えてしまいます。考えているうちに甘えたくなって…こうして電話を掛けています』
「瑞穂って最近寂しいの?」
『え…!』
電話の向こうを想像しよう。今、瑞穂は顔が赤くなっているはずだ。驚いたように声を上げるから。
「俺に会いたいんでしょ」
『…そんなこと毎日思っていますよ』
いたずらっぽく言えば小さな声で答えられた。
『やっぱり、私は住菱くんが好きです。あの後、何していたか話しますか?』
「え、ああ…」
『私、國元さんと郁助さんに会ったのです。もちろん、偶然ですよ』
俺は目を見開いた。
『駅で、なんで一緒に帰らないのかって聞かれたんです。だから、私の用事に付き合ってもらいました』
「え、じゃあ用事って何?」
すると、『しー』と言って俺を黙らせた。
『どうしたら彼女とうまく付き合えるかとかどうしたらモテるのかとか相談に答えながら私の用事に付き合ってもらいました。そうしたら、やっぱり住菱くんと付き合えてよかったなって思って。私、すごく幸せです』
「でも、それは俺と別れてからだろ?その前にもいろいろあったじゃん」
『そんなの、住菱くんにさようならを伝えるためですよ。帰ってしまう前に住菱くんを感じたかったからです』
不機嫌そうに言われた。
「結局、瑞穂の用事って何?國元と郁助だけずるいなー」
『秘密です。お二人にも秘密にするようにお願いしました』
「俺に隠し事?」
不満気に言ったら瑞穂はくすくすと笑った。
『必ず、今日のことはわかりますよ』
笑いながら瑞穂は答えた。