8 目に見えるお揃いが欲しい
「あ、手繋ぐんだった。鞄持つよ」
「お願いします」
素直に預けた代わりに瑞穂の手を握った。
「デートですね」
瑞穂が嬉しそうに笑った。
「どこに行きたい?」
「うーん…あ、ネックレス買った百貨店行きたいです!」
人差し指を立てて元気よく提案した。
「いいね。行こう」
俺も微笑んで頷いた。
「住菱くんも毎日着けてくれてるの嬉しいです」
「隠れているのによくわかるな」
学校ではお互い隠しているが、休みの日でも俺は服の下に隠してしまっている。瑞穂はちゃんと着けてくれているが。
「泊まった時、朝着けてるの見てましたから。休みの日は隠さなくてもいいのに…」
瑞穂は頬を膨らませた。
「俺の服に合わないような気がして…」
「隠すなら指輪お揃いで買っちゃいますよ!」
「え、隠してるの怒ってた?」
俺は苦笑いした。
「怒ってる訳ではないですけど、お揃いなのになーとは思ってます」
「ごめんなさい…」
俺は俯いた。
「どんな服にでも合う指輪なら付けてくれますよね?」
「着けるけど、まだ二年早いでしょ」
「結婚指輪って訳じゃないです!」
瑞穂は首を振った。
「あくまでお揃いです。もちろん、結婚したら結婚指輪も買いましょうね」
瑞穂は笑顔で言った。
「それはもちろん。でも、指輪買ったらネックレスはどうなるんだ?」
「着けなくてもいいですよ。見えないのですから」
不貞腐れたように言われた。
「別に着けたくない訳ではないからな。でも、指輪のほうが目に見えるしいいかもな」
「学校では着けられないですけどね…」
目を逸らして苦笑いした。