4 帰してくれない彼女
「来てほしいですけど…住菱くんが居たらまた変なこと考えてしまいます」
瑞穂は顔を赤くした。
「いいじゃん!…良くないけど。でもいいじゃん!」
瑞穂をからかいたい気持ちと変な方向に進んでほしくない気持ちが交互にやって来る。
「…まあ、今日は家帰るよ」
「え?」
俺は電車を降りた。
「また明日」
「え、えぇ!?」
瑞穂に驚いた顔をされたが手を振って見送った。
(瑞穂はもっと落ち着いてもらわないと心配だ)
今日も俺が家に行ったらまた瑞穂が変になる。瑞穂が落ち着いてもらうには俺と距離をおけばいいはず。
(明日には戻っていればいいな…)
「住菱くん!」
次の日の放課後、俺が帰ろうとしたら腕に抱きつかれた。
「今日は家に来てほしいです!」
「ま、また!?」
俺は目を丸くした。
「住菱ー!」
郁助が顔を出した。
「お、おう郁助!どうした?」
瑞穂を引き剥がして郁助のもとへ向かった。
「兄ちゃんがカフェ行きたいって。安田さんもどうですか?」
郁助は瑞穂のほうを見た。
「住菱くんが行くなら行きます」
瑞穂は目を逸らした。
「行く。瑞穂も行くか」
俺は瑞穂のほうに手を差し出した。
「…はい」
ゆっくりと手を握ってくれた。
「…僕、邪魔しちゃった?」
廊下を歩きながら郁助が申し訳なさそうに言った。
「してないよ。困ってたから助かった…」
「こ、困ってたって…!」
瑞穂が怒り気味に言った。
「住菱くん意地悪…」
「えぇ…喧嘩中だった?」
郁助は苦笑いした。
「安心してくれ、冗談だ。俺達は喧嘩なんてしてない」
「良かったー…」
郁助は安堵したように笑った。