7 私の家来てください
「住菱くん」
放課後になって帰ろうとしたら瑞穂に肩を掴まれた。
「私の家来てください」
「…は!?」
俺は目を丸くした。
「本気なのか?ビデオ通話もできなかったくせに?」
「…!え、映像より本物を見たいはずでしょう?」
瑞穂は顔を赤くした。
「まるでうさぎみたいだぞ、瑞穂」
「…そうです。私はうさぎですよ」
恥ずかしそうに言う瑞穂に俺は目を見開いた。
「来てくれないのですか?」
瑞穂は俺の腕を掴んだ。
「珍しく瑞穂がどうしようもないから行くよ」
「やったぁ」
瑞穂は笑顔で抱きついてきた。
「…そもそも、なんでバニー服なんて買ったの?」
部屋に入ると、瑞穂はクローゼットに入って着替え始めた。
「住菱くんが言ってたこと思い出したんです。バニーガールって直訳したらうさぎの女の子じゃないですか。だから、ちょっと気になって」
「瑞穂は本当にうさぎが好きだな…」
俺は苦笑いした。
「でも、着てみたら想像以上にいろいろ…へ、変だなって思って…そしたら、住菱くんから電話来て思わず言ってしまいました…」
声を震わせる瑞穂にただ苦笑いすることしかできなかった。俺も軽い気持ちで言ってしまって瑞穂には申し訳ない。
「やっぱり、どこがうさぎなんですか?」
クローゼットから不満が聞こえた。
「そんなとこで言われても、俺は見えないから何も言えないけど?」
「だ、だってやっぱり…恥ずかしいですよ…」
俺はため息をついてクローゼットに向かった。
「着替え終わったんだろ?見せてみろって…」
「わっ!?」
クローゼットを開ければ網タイツに黒いバニースーツを着た瑞穂が振り返った。
パタン。
扉を閉めた。
「住菱くん!?何も言わずに閉めるなんて…!」
俺は扉を抑えてため息をついた。