5 変な服
「ま、着替えてるならもう切るよ」
『待ってください!』
瑞穂が慌てて言った。
『本当はちゃんと服着てます。着ているんですけど…変な服で…』
瑞穂の言うことに首を傾げた。
「どんな服着ているんだよ…」
俺は呆れて言った。
『前、住菱くんが言ってたバニーガールってこれで合っているのですかね?』
「…え?」
本当にわからなかった。瑞穂が今何をしているのか。
『カチューシャくらいしか私にはうさぎに見えないのですけど…』
「…瑞穂?本当にどうしたんだ?まさかとは思うけどね…」
むしろ焦ってきた。瑞穂が電話の向こうでどんな格好をしているのか。
『やっぱり違うと思いますよね?だって、こんな服…』
「ごめん。本当に切っていいか?」
瑞穂の言葉を聞けば聞くほど混乱してくる。これ以上真実を言われないうちに切りたい。
『え、あ、はい…』
「じゃあ、今話したこと全部忘れるから」
俺は慌てて電話を切った。
(忘れよう。本当に…瑞穂が、瑞穂が着る訳ないだろ)
そう着替えてただけ。変な服なんて着てなかったんだと必死に脳へ焼き付けた。
「住菱くん、おはようございます」
「お、おはよう瑞穂…」
何事も無かったかのように挨拶をする瑞穂。
(まあ、休み挟んだから忘れたのかな)
俺は瑞穂の様子を見て安堵した。
「住菱くん、わかりましたよ!」
瑞穂は自慢気に言った。
「何を?」
「住菱くんが好きなあれですよ〜」
「……落ち着いてくれ瑞穂」
俺は固まった。あ、いや、そういうことではなく体全体が固まってしまったんだ。
「三井さんが好きなあれ?」
弥生が不思議そうに言った。
「も、もう、住菱くんったら本当に…」
俺は瑞穂の口を慌てて塞いだ。