2 偶然会った笑顔
「…あ」
俺はカフェの前で立ち止まった。
カランカラン。
今日は一人。先に店に入れる相手がいない。
(毎日飲んでるな…)
果実入りのレモンソーダ。瑞穂はいつもストロベリーフロートを頼んでいた。
(なんで)
俺はストローに口をつけた。
(なんで俺はぼっちなんだ!!)
悲しすぎて涙が出そうだ。一気にドリンクを吸い上げる。
(俺、朝おはようって言ったあとどうかしたかって聞いただけだよな?何が悪かったんだ!しかも教室からいなくなるし俺には瑞穂の心情がわからねぇよ!!)
ズズズ。
一気に飲み過ぎてもうドリンクがない。
(あ、やべ)
俺は口元を押さえてトイレに駆け込んだ。
店を出て、駅に向かった。
(めっちゃでけーゲップ出た)
汚すぎる。財閥跡継ぎのくせにはしたない。
「三井さん?」
その声に振り返った。
「瑞穂…」
瑞穂は俺に駆け寄った。
「帰りですか?」
「ああ。いつものカフェにいた」
瑞穂は目を見開いた。
「私も行けば良かった…」
瑞穂は悲しげな顔をした。
「ごめんなさい。今日、全然話せなくて」
俺は深呼吸してから聞いてみた。
「休み時間のとき、どこに行ってたんだ…?」
「えっと…」
瑞穂は答えにくそうにした。
「桜を見に行ってました」
「…え?」
俺は首を傾げた。
「三井さんと見たくてどこが一番綺麗なのか探していました…!」
(…えぇ!?)
俺は目を丸くした。
(俺と見たい?何それ可愛いかよ…!)
俺は呆然と立ち尽くした。
「朝も桜見に行きませんかって聞きたかったのですが、勇気が出なくて…それで黙ったまま一日が終わってしまって後悔していました」
瑞穂は俺を見た。
「怒っていますよね…?」
「へ!?」
思わず変な声が出た。
「でも、私見つけられました!学校で一番綺麗に桜が見られる場所!」
瑞穂は俺の手を取った。
「明日、一緒に見に行きませんか…?」
俺の目を見て問いかける瑞穂。
「ああ…。もちろん。もちろん見るよ…!」
俺は嬉しくて笑顔で答えた。
「良かった…!」
瑞穂から満面の笑みが返ってきた。