7 楽しい話をしよう
「何を話そうか考えるほど難しくなっていく」
休み時間に俺は瑞穂の隣で腕を組んだ。
「えっと…どういうことですか?」
瑞穂は苦笑いした。
「三菱兄弟に話すことだよ。六年会っていなかったからさ」
「けっこう長いですね」
瑞穂は目を見開いた。
「俺もいろいろあったから話すことが山積みなんだ。どれから話していけばいいのか…」
こんなことを言っても瑞穂を困らせるだけ。瑞穂に俺の過去なんて知らないし余計な話をしてしまった。
「…まずは、楽しい話をしませんか?」
「え?」
瑞穂は微笑んだ。
「難しい話ばかりして疲れていませんか?もっと肩の力を抜いて仲良く話してみましょうよ」
その答えに俺はしばらく考えた。
「…うん。もっと楽しい話できるといいな」
俺は少し笑って答えた。
「郁助と國元はカラオケ好きか?」
休み時間に郁助と廊下で話すことにした。
「兄ちゃんがけっこう好きだよ」
「じゃあ、放課後行かないか?」
「聞いてみるよ」
郁助はスマホを取り出した。
「行くって。瑞穂さんは行くのかって聞かれた」
「瑞穂か…」
男三人と女子一人ってどうだか…。
「瑞穂は連れて行かない。俺達三人で行こう」
「わかった。伝えとくよ」
そう言って郁助は教室に戻って行った。
「瑞穂さんいないのかよ〜。つまんねー」
放課後、カラオケに向かいながら國元は文句を垂れた。
「男三人いる密室に女子一人を連れて行く訳にはいかないだろ」
「変なことしないのに。俺、今日一回も瑞穂さんに会ってないぞ?」
「瑞穂は俺の彼女だ。なんでお前に毎日会わせないといけないんだ」
俺は國元の頬をつねった。
「兄ちゃん、僕も安田さんに今日は会ってないよ」
郁助は苦笑いした。